毎年冬にスタッドレスタイヤへ交換する時期になると、必ず発生するタイヤの脱落事故。
タイヤって、脱着した後が一番外れやすくなります。
速度が乗っていれば、たとえ軽自動車サイズのタイヤであっても人間に直撃すると命に関わる重大な衝撃を与えてしまいます。
こと悲惨な事故になるのが大型のトラックです。タイヤも大きいし、決まって外れやすい場所があるのです。それは左側の後輪です。
これは、タイヤのホイールナットの規格が変わってから尚更外れやすくなったと言っても過言ではないのです。
こちらのネジはISO規格に変わる前、日本独自で使われていたネジです。JIS規格。
現在はこちらのISO規格です。
何が違うのか?
まず最大の違いはJIS規格の場合、助手席側は逆ネジになります。
ネジにLと書いてあるのがわかります。
これは左へ回すと締め込む逆ネジタイプなんです。
JIS規格の時は、右側側面は正ネジ。左側側面は逆ネジを使っていたんです。
理由はなぜか?これは非常に理にかなっています。
車が直進する時。車が前に進むと、右側面はタイヤの進行方向の力が、ネジを締めつける方向と同じ方へ動いています。
逆に左側面は緩める方向へタイヤが回っていることになる。さらにカーブを曲がると内輪差でなおさら車軸にはより強い振動が加わります。
では左側を逆ネジにするとどうなるか?
左側面もネジを締め付ける方向へと力が作用します。
左側面を逆ネジにすることで、緩みを防止できるという点が一つのメリットです。
そしてJIS規格はWタイヤの場合、インナーのタイヤとアウターのタイヤはそれぞれ独立したネジで締め付けています。
さらにネジの形状がテーパーになっているため、締め込んでいくと必然とセンターが合致するようになります。
対する現在採用しているISO規格は2つのタイヤを1つのネジで締め付けています。
これだとネジが外れると両方のタイヤが一気に外れる。
JIS規格の場合はアウターが外れてもインナーは独立しているネジなので、一緒に外れるのはハブなどに問題がある時だけです。
加えて日本の道路って左車線です。
左側通行で左へカーブを曲がる時、内輪差が相当なものになります。海外の場合は右側通行ですので。
日本のように左後輪が相当な内輪差で使われるわけでもないのです。
これが尚更緩みやすく振動をあたえてしまうと。
国交相では、こういった治具をナットにつけて、目視で緩みをわかりやすくせよ!とか言っていますが、実際にこの治具を取り付けているトラックに遭遇したことはありません。
日本は日本にあったJIS規格のままで行けばいいのに、国際社会の足並みに揃えないといけないといった事情でISO規格を採用。
それがこの脱輪事故の増加へとつながっているわけです。
とはいえISO規格で作られているトラックが存在する限りはどうしようもないです。定期的にトルクレンチで増し締めをするなどして対処しないとダメですね。
検査ハンマーで叩いても、完全に緩んでいるものはわかるけど緩み始めだと非常にわかりにくいので。