MHOエンジニアリング

現役猫系自動車整備士YouTuberチームMHOの車ブログ

緊急時に覚えておこう!ペダル踏み間違い時加速抑制装置について

近年ペダルの踏み間違いが起因となる事故が多発してきています。老若男女問わずして事故が発生してきています。

人間焦ってパニックになると思わぬ操作ミスをしてしまう。その辺をクルマがカバーしてくれるようになり、誤発進防止装置などといったものが取り付けられるようになってきました。

 

今回はちょっと知っておいて欲しいところです。通常この誤発進防止装置の類は自動ブレーキの機能と連携しています。

レーダーだったりレーザーだったりカメラだったりで、目の前の障害物を感知してエンジンの出力を下げるなどといった制御をしています。

このありがたいはずの制御。逆に仇となるケースがあります。その辺をきちんと理解して、緊急時に備えてください。

 

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考えられるケースとして、踏切を渡ろうとしている場合。渡りきる前に遮断機が下がってしまった。まあこういう場合って、そもそもが踏切に入っちゃいけないタイミングで入ってるわけですけど・・・。

もし踏切の中で遮断機が降りてしまった時、場合によっては目の前に降りている遮断機に誤発進防止装置が働いて、エンジン出力を制限することがあります。

そんな時どうするか?出力制限がかけられた状態では踏切から脱出できない可能性があります。

もし遮断機に反応して装置が作動した時は、アクセルを踏み続けること。すると作動が解除されて発進が可能になります。

逆に目の前に障害物があって、警告音が出たらペダルから足を離して、踏み間違いを確認しないといけません。

万が一の時に覚えておいてください。これって国土交通省のプレスリリースに出ている内容です。

国交省がわざわざ自分でYouTube動画を使って説明もしているので、一度ご覧下さい。

https://www.youtube.com/watch?v=HvM6Fh-ELvw

覚えておいてそんはない知識です。

ノートeパワーにAIを搭載する?どんな制御を加えてくるのか

ノートeパワーです。日産のコンパクトカーであり、シリーズハイブリッドで人気車です。このノートeパワーに、AIを搭載して制御を入れてくるという。

まずおさらいです。eパワーの仕組みから。基本的にモーターで走る電気自動車です。リーフと同じモーターを使っています。しかし、バッテリーをリーフ並みに搭載すると高額になってしまう。

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バッテリーで走れる距離を2km弱として、エンジンで発電しながら走るというものです。

同クラスのアクアやフィットHVなど従来型のハイブリッドカーはエンジンとモーター駆動を組合わせています。

ノートeパワーは、駆動は大出力のモーターを使っています。純粋な電気自動車と比べると搭載しているバッテリーが小さいので、バッテリーが尽きたらエンジンが駆動してバッテリーに電気を蓄える。

エンジンを発電機として使っているのが特徴です。

このeパワーにAIを搭載して制御をかけるということなのですが、なかなか考えてきたねといったところです。

 

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エンジンが始動すると、純粋に電気自動車モードで走ってる時よりも騒音は当然大きくなります。そして振動も発生します。これをなんとかしようと。

どういった制御をAIにやらせるのかというと、ガタガタ道などが発生しやすいところでエンジンを始動させる。

そして、滑らかな道ではエンジンを停止する。この制御を繰り返すわけですね。さらにはドライバーの走行ルートをデータとして蓄積。そのドライバーが日常で走る道の中で、路面の荒いロードノイズが発生しやすいポイントを選んで最適化していくと。

こういう制御を日産が考えているそうです。

確かにガタガタ道でエンジンが始動すれば、ガタガタする音に紛れてしまうので、ドライバーはエンジンが始動したことを感じにくくなります。

滑らかな道でエンジンがかかるよりも、ドライバーの満足度は上がっていくでしょう。

興味深いのはAIにやらせるということですね。ある程度のロードノイズが発生したら制御するプログラムではなくて、AIにドライバー一人一人のデータを解析・学習させて最適なポイントを1台1台制御していく。

このあたりの考えは、これからの時代を感じますね。オンリーワンの制御。可能にするのはAIです。

トラックメーカーもコネクテッドカーを導入へ

トヨタが皮切りに、コネクテッドカーというものが徐々に広まりつつあります。コネクテッドカーというのは、クルマがインターネットに繋がっているものです。

トヨタはG-BOOKというナビを昔からネットにつないで自動で更新といった試みをしていましたが、コネクテッドカーというのは車そのものをネットに繋げるものです。

コネクテッドカーの利点というと、車の状態を常にトヨタのコントロールセンターが把握していて、故障コードが入力されたらドライバーよりも早くにトヨタ側で察知。

修理該当部品をあらかじめ手配して、さっと修理ができてしまう。こんな利点があります。その他にも事故などの衝撃をすぐに察知することもできます。メリットが多数あるのがコネクテッドカーです。

今現在、みんなでコネクテッドカーの使い方を広げましょう。という試みが始まっています。

ホンダもコネクテッドを導入するということで、乗用車メーカーは次々に参入し始めていますが、ここにきてトラックメーカーも波に乗ろうとなっています。

トラックって、平ボディのトラックであれば問題ないのですが、架装されているトラックがかなり多いです。

トラックの頭だけあって、後ろがタンクローリーになっていたり、冷凍車になっていたりキャリアカー仕様になっていたり。実はこの架装部分は自動車メーカーが作ってるわけではありません。

例えばいすづや三菱ふそうがベースのエルフやキャンターを用意します。そのうえに架装メーカーがローリーのタンクを積んだりキャリアカーしようにしたりする。

ローリーを例に上げると、ミッションから小さいプロペラシャフトをもう1本出してそれを動力としてローリーのポンプをまわしています。

このプロペラシャフトから先の部分は架装メーカーが担当しています。トラックメーカーがコネクテッド仕様にするには、架装メーカーも便乗してもらわないとダメ。

各トラックメーカーはそれぞれ架装メーカーにも、架装部分をコネクテッド化するように呼びかけるということです。これにより、どこかでローリーのポンプが壊れた。となった場合でも、架装メーカー部分のコネクテッド機能ですぐに部品の特定ができ修理がスムーズに行える。

こういう時代がもう少し先にやってくると予想します。

さらにこの先の時代になると、車だけではなくて車と街が融合していく。そんなイメージをトヨタは抱いている。E-パレットと呼ばれる無人コネクテッドカーが街中を複数台走る。

そう遠くない将来そんな時代がくる。トヨタソフトバンクと提携したのもこの辺の技術協力を睨んでいるわけです。

自動車は大きな変換期を迎えつつあります。

車が水没してしまったら、見切りをつけるのはどの程度の浸水具合?

台風の影響で長野管轄の車が相当な被害をうけました。車にとって相当厄介な部類にはいるのが水没。

車が事故で損傷したのなら、その該当部位を交換すれば復元ができます。

しかし、水害になるとその判断が非常に難しくなります。

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最初の判断が住宅と同じ。

床上浸水かそうでないか?車の場合の床上浸水というと、室内まで水が入ったかどうか?ここがポイントになります。

もし室内まで浸水していたらどうするか?

最低でもフロア下のカーペットをすべてはずして点検します。多くの車がステップ付近にメインのワイヤリングハーネスを通している。

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きちんと直したいのであれば、水に浸かってしまったハーネスは交換すべきです。しかし浸水具合によっては、その他いろいろなカプラーやら電装品が浸かってしまうこともあります。
どこまでを交換するのか?このあたりは予算とも相談していきながらになります。

何故ならば、全てを新品に交換したとしても後に原因不明の故障を発症する可能性もゼロではありません。

だとすると、故障が表面化してからその部品を交換するのか?このあたりの見極めが非常に難しい。

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車の外側にある配線は防水処理をしてあります。しかしエンジンルームの全てがそうではありません。

エンジン上部のヒューズボックスなど、そのあたりまで水に浸かってしまうと膨大な費用が必要になってきます。

バッテリーの高さまで水がついたとなると、車は全損という判断になってきます。

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車両保険に加入していれば、まず間違いなく全損となります。

保険金を受け取って車自体を買い換える。車両保険に加入してる人のほとんどがその選択肢をとっています。

中には新しい車にも車両保険をかけていない人がいます。こういう場合、なかなかあきらめがつかないので修理できるかどうかを依頼されます。

修理をどのように行うか?水没した車は何度も繰り返しになりますが、時間が経過してからハーネスが腐食したり電気系統の故障でいろんなトラブルを発生することもあります。

ある程度乗れるところまで復元して、様子を見ながら修理を追加していくというのが多いですね。すぐに乗り換えられない人だってたくさんいます。

とにかく車がないと生活が困難な地域だけに、非常に困ります。

ラジエターを定期交換部品と考えるかどうするか?

随分と少なくなってきました。車のオーバーヒート。車自体が正常であれば、オーバーヒートを起こすことってほぼありえないところまで、国産車は来たといっても過言ではありません。

それでも、何かしらの部品が壊れたりしてオーバーヒートを起こすことがやはりあります。どこまでオーバーヒートという故障を予防できるか?

今回はそれを考えてみます。

オーバーヒートの起こる原因は

クーラント漏れ

・ラジエターの機能不良

・電動ファン故障

・エンジン負荷が多すぎる

ウォーターポンプやファンベルトに起因するもの

サーモスタット不良

・冷却ホース系統

上げていけば、まだまだ出てきそうです。ちょっとまとめると

「水漏れ」「冷却不良」「電気系統の故障」

こんな風に大別できるかなと。この中で、メンテナンスによって防げそうなものが水漏れと冷却不良。電気系統の故障って、いきなり起こったりするので防げるかというと難しい。

車の整備では水漏れ修理が圧倒的に多いですかね。冷却不良などはきちんとクーラントを交換していれば、あまり起こらない。

水漏れの中で代表的なのがウォーターポンプの漏れ。これは10万キロをめどに交換を推奨している部品です。

タイミングベルトだろうがチェーンだろうがです。

そして各部ホース類。こちらも10年10万キロを越えてくると、弾力性を失ってくるので交換したほうがいいです。

この手のホースもいきなり破裂します。

問題はラジエターです。

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車のラジエターを定期交換部品と考えるかどうか?

まず、ラジエター交換という作業ですが結構高いです。そして、定期交換するといってもどの程度のスパンで交換すべきかがちょっと不明瞭。

さらには、ラジエターの寿命は外から見た感じではわからない。

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ラジエターが漏れる場合って、物理的に何かがぶつかって穴があいている場合と、アッパータンクやロアタンクのOリングなどから漏れてくるケースとに分けられてきます。

タクシー業界や運送業界であれば、間違いなく定期的に交換するであろう部品に挙げられる。

ラジエターのパンクっていうのは、予期ができないトラブルです。そして、走行不能に陥ってしまう。であれば決めた間隔で交換に踏み切るほうがいいということです。

しかしこれを一般ユーザーに当てはめるかどうか?というとちょっと難しい部分です。

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その理由は、生涯ラジエターを交換しないまま廃車を迎える車が大半であるということ。そして、部品交換が高額であるということです。

ラジエターって高いです。オールアルミなどでできているとさらに高い。社外品で設定がある場合、率先して社外品を使用したいくらい高い。

そこに脱着工賃とクーラント代が加算されてくるので、軽自動車であっても4万円近い修理金額になってきます。

ラジエターが壊れると、走行不能にはなりますが、タイミングベルトのようにエンジンがすぐに壊れるわけでもありません。

もしラジエターがパンクしたらその時点ですぐにエンジンを停止できれば、ラジエターを交換することでエンジンは問題なくつかえるでしょう。

タイミングベルトは切れたら終わり。ラジエターは漏れたらとりあえずエンジンを停止して修理すれば復活する。

この辺の緊急性に差が出てくるので、なかなか定期交換するかというと難しい部品でもあります。

それでもあえて、ラジエターを交換するのであればどのくらいのスパンを考えればいいか?

これは10年15万キロ位をめどに交換すれば大丈夫かなと。ただ、クーラントの管理を怠っていた車はこれより早くにパンクする可能性があります。

車を大事にしたいという気持ちが人一倍強いのであれば、ラジエターも定期交換部品であるということを頭の片隅に入れておいてください。

クーラントを交換せよ!オーバーヒート事件簿

車がオーバーヒートするっていっても、なかなか遭遇しなくなりました。それでもたまにオーバーヒートをしたという話を受けて、車を預かったりします。

今の車でオーバーヒートするとしたら何かしらの故障ですね。

・ラジエターがパンクした

・ホース類がパンクした

・電動ファンが動かない

サーモスタットが動かない

などなど。この中で予防修理するとなるとサーモスタットとホース類ですかね・・。ラジエターや電動ファンは、経年劣化するとはいえかなり高額なパーツになるので、予防修理として交換する意識が低いです。

大体が壊れてから交換するという方向ですね。

中には整備不良でオーバーヒートに陥る車もたまにあります。僕が過去に一度だけクーラントの交換を怠り続けていたがためにオーバーヒートした車がありました。

それを紹介。

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車はスズキのKeiでした。

水温計が真冬なのに振り切ってしまうということで入庫。確かに電動ファンも回りっぱなし。こりゃオーバーヒートしているのは間違いなさそう。

エンジンが冷えてからラジエターキャップを開けてみると・・・

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この抹茶色。Keiには緑色のクーラントが入っているはずです。もうただの錆汁でしかありません。

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とりあえずクーラントを抜いて水で何度も何度もフラッシングしました。ラジエター洗浄剤などを使うと思わぬ副作用が出る可能性があったので、水でひたすらフラッシング。

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何度フラッシングしてもこの状態です。最初はラジエター内をひたすら水でフラッシング。そのあとはエンジンをかけて回す。サーモが開いたらまたエンジンをとめてひえてから抜く。

こうやって冷却ライン全てに行き渡るようにひたすらフラッシングをしました。

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幸いなことにヘッドは抜けてなかったようで、茶色な水が透明に変わってきたらちゃんとした濃度でクーラントをいれてエア抜き

水温計をみるとようやく安定しました。

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クーラントを交換しないでオーバーヒートになるって、理屈ではわかっていても実際にそれが起こってる車は後にも先にもこの車が初めてでしたね。

不思議なもので、クーラントってこれだけ錆びても防錆効果はなくなったとしても不凍効果はちゃんと持続してるんだよなって。

エンジンが凍りついてしまったということはなかったみたいです。

今ではスーパークーラントになって長寿命化されてきていますが、ちゃんとしたスパンで交換してあげないとダメです。

昔以上にクーラントを交換するっていう意識がなくなってきてますからね。スーパークーラント充填車だってとっくに交換時期を超えてる車がありますから。

 

 

車は完全ではありません。どうしようもない故障に納得できないお客さんとのやり取りを紹介

最近お客さんに怒られることが多くなってきたような気がします。お客さんの言い分もわかるのですが、どうしようもできない事って多い。

今回はそんなやりとりを2つほど、ケース別に紹介してみます。

ブレーキが引きずった?不良品じゃないのか!?

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まずトップバッターでの紹介です。

仮称でAさんとします。Aさんが乗っている車、平成20年式の軽自動車です。営業時間前に来て

「最近燃費が悪いんだ!おかしいからすぐに点検して!」

と言われました。燃費が悪い・・・?このAさんは毎回ガソリンを入れるたびに細かく燃費計測をしている人です。一体どの程度燃費が悪いのかは不明ながら、とりあえず車を移動して工場へ。

すると、なんだか車が重たい・・。もしや・・。

2柱リフトに入れて車両をリフトアップします。車をリフトに上げてタイヤを浮かした状態でタイヤを手で回してみる。

フロントタイヤを回してみると・・・・・回らない・・・。これは明らかにブレーキを引きずっている。これでは燃費が悪いというのも納得できます。

つねにブレーキが若干きいてる状態で、走ってるわけですから。

ただ車両火災になるか?というそこまで重篤に引きずってはいません。反対のタイヤは手でくるくる回りますが、引きずってるタイヤは力を加えると回ることは回る。

軽微な引きずりです。

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ディスクブレーキが引きずる原因のほとんどが、ピストンの固着や錆です。ブレーキキャリパーのダストブーツが切れて内部に水が浸入して錆びてしまっている。

もしくはずーっと動かさなかった車のブレーキが固まってる。Aさんの場合、通勤で毎日使ってるので、原因は前者になると思われます。

この日も出勤前に見て欲しいと来たので、時間が取れなかった為キャリパーを取り外してまでは点検しませんでした。

Aさんの車は現在ブレーキが引きずってるということ。それに対する概算の見積書を作ってお渡ししました。内容はあくまでも分解していないので概算です。

ブレーキキャリパーのOH・シールキット交換。おそらくピストンも錆び付いて使い物にならないので、ピストンの交換。あとはブレーキフルード交換といった内容です。

ブレーキパッドの残量はそこそこあったので、できれば交換をおすすめというくらいに含めておきました。

見積書を見せるとAさん、納得出来ていない模様です。

「こんなブレーキが壊れるなんて信じられない!メーカーにクレームを入れて欲しい。メーカーの責任でしょ?どうなってるんだ!」

と一点張りです。

自動車には保証期間というものがあり、Aさんの車は保証期間が過ぎているということ。さらには、故障した原因が使用過程の外的要因の可能性が高いため、保証はほとんど難しいと話をしました。

それでも納得がいかないということなので、メーカーには相談を入れてみます。その後ご報告をします。と言ってとりあえず帰っていきました。

後日事の経緯を最寄りのディーラーに相談すると言うまでもなく

「保証はかなり難しいですね・・・」

とディーラーのフロントマンは困惑気味です。僕もこんな相談しても無理だということは百も承知です。お客さんの気持ちというものをとりあえずつないでおかないと、約束したことが嘘になるので報告をしておきました。

ディーラーとのやりとりをAさんに伝えると、Aさんはとりあえず修理はしない!見送る!といっていました。

ブレーキが固着すると、症状がひどくなると車両火災になる恐れがあるということ。エンジンが途中で停止するよりも危険であるということだけは重々説明しておきました。

 

鍵が回らない!こんなバカな話があるか!

続いてのケースです。電話がかかってきました。

「車のエンジンがかからない!すぐに来てくれ!」

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これだけのやりとりでは、どのような装備をしていけばいいかわからないので、電話で問診をしました。

エンジンがかからないが、セルモーターは回るのか?と聞くと

「回らない」

とBさん(仮称)

鍵を回してもセルが回らない。なのでエンジンがかからないということ。Bさんの車両データを見ると気になるところがありました。

この車、9割くらいはMTの商用車です。だけどなんとなく覚えていた。Bさんの車はATであると。もしかしてDレンジに入ってるんじゃないのかな?

Bさんに電話をして、シフトがDに入ってないかを聞きました。そうしたら案の定Dレンジに入ってるという。ではPレンジかNレンジに戻して鍵を回してくださいと伝えると

「鍵が回らない」

という。

この時点でなんとなく原因が掴めてきたので、それなりの装備を整えて出張に出発。車両を確認すると、確かに鍵が回らない。今までは普通に使えていたというわけですが、どうやらシフトロックがおかしくなっているか、シリンダーがおかしくなってるかのどちらか。

現場でコラムカバーとシフトカバー回りを分解してみると、すごい砂やら泥が出てきました。

こりゃダメだ。原因はシフトリンケージに泥や砂が堆積して、ワイヤーの部分が少し曲がっていました。

このため、Pレンジまで戻そうとしてもその手前くらいまでしかシフトが移動しない。ワイヤーをはずしてまがりをプライヤーで修正して組み付けるとなんとか動くようになった。

そしてキーも回るようになった。

どうしてこんなことになったんだ!とお怒りのBさん。分解したシフト周りを見せて、砂や泥が原因でシフトリンケージが正常な動作ができなかった。

そのため、キーシリンダーが微妙にハーフの状態になってしまってエンジンがかからない。根本的な原因はシフト周りのゴミや泥ですとやんわり説明。あくまでやんわりです。

するとBさん

「こんなの構造がおかしいじゃないか!メーカーにクレームだ!お金はメーカーからもらってくれ。びた一文納得できるまで払わない!」

との一点張り。

一応難しいけど、これはこのメーカーに限った事ではなくて、どのメーカーの同型車種で起こり得ること。気をつけるとしたら、砂や泥が体積する前にちゃんと掃除をしないと難しいと思うとあくまでやんわり告げましたが、まったく納得してもらえない。

とりあえず出張代金は上司に報告して保留としました。あのあとBさんにアフターフォローの電話をしたら

「メーカーのお客様相談室に文句を言ってやった!修理代はメーカーからもらってくれ!」

車は完全な乗り物ではありません

ぼくはこういった現場のクレーム処理を業務の一環として引き受けているので、あくまでもニュートラルな立場でお客さんと対話することを心がけています。

まず第一に優先するべきことは、お客さんの立場に立って物事を考えるということ。この手のクレームを毎日のように処理してきて、同僚からは

「いいかげん理不尽すぎてムカつかないか?」

と心配されることもあります。僕もクレーム処理を最初やり始めた頃は

「どうしてこんなに無茶苦茶なことをいうのだろう?」

と若干人間の本質というものに疑問を持つことが多々ありました。でも場数を踏んでいくと少しずつ見えてきたこと。

クレームを言ってくる人は、そもそも車の故障について分かっていないことが多いということ。

今の時代車って本当に故障が少なくなりました。でもたまに故障に遭遇すると、こんな不良品といったイメージがその人に定着してしまいます。

それほど国産車の品質が上がってきたということ。昔ならよく止まっちゃうので

「またとまっちまったよ・・・」

と、故障に対してもお客さんは寛容でした。

だけど今はダメです。それほど国産車に求めるハードルが上がってきています。そんな中たまたまこういった故障に遭遇すると

「どうして自分が・・・」

こういう気持ちになるのがよくわかる。ぼくは毎日のように車の故障と向き合ってるので、いくら新車を買ったとしても壊れても別に驚きません。これ本当。

故障に慣れてない人が故障に遭遇するときに心細さや不安さ。これを整備士は忘れてはいけない。これがお客さんの立場。ユーザー目線で考えること。

そして次はお客さんに納得してもらうための説明ですね。どんな電化製品だって壊れますよね。この前、うちの洗濯機が壊れました。8年くらい使ったけど、最後は脱水ができなくなってしまった。

整備士なので分解して直そうと思ったけど、中空になってる層がおかしくて、脱水の遠心力のバランスが崩れて洗濯機の壁にぶつかりまくってたんです。

どうしてこうなったかというと、いつも容量オーバーで回し続けてきた結果だなと。バラしてみると理由がわかる。洗濯槽の外側めちゃくちゃ傷だらけです。おそらくここは傷があってはいけない箇所のはず。

しょうがないから買い替え。電子レンジも壊れました。温められなくなった。これも分解して直そうと思ったけど、配線とかその辺は問題なさそうだったけどあとはわからなかったのでしょうがないので買い替えました。

電化製品に限らず商品には保証期間というものが存在します。その期間内で壊れたら無償で修理してくれる。使ってる側に過失がなければです。

車もそうです。一般保証と特別保証。これを過ぎると基本的に相当なケースがない限り修理代はかかります。

使っていく中で、部品は劣化する。それらをひっくるめてずーっと保証しろなんて無理ですから。ここをお客さんにいかに納得してもらうかですね。

我が家の兄も新車で買った車、保証が切れた途端にエアコンが壊れました。続いてパワーウインドウも壊れました。もうメーカーに不信感全開です。

でもしょうがないのです。車って完全なものではないから。まあ兄の場合は保証期間が過ぎてすぐだし、彼に過失があるわけではないので同情しますけど。

こちらとしてもお客さんには気分良くのっていてもらいたい。でも、決められたルールをこえたらやっぱりお金が発生する。どうしようもないことってありますからね。

車は完全ではありません。どんなに性能が良くなったって故障するときはしちゃうのです。というお話でした。